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発達障害のお子様への学習支援のコツ|言葉の遅れ・手先の作業への対応法

お子様の発達に個人差があるのは当然のことですが、「言葉が遅い」「手先が不器用」といった特性が目立つと、保護者様は「学習面で遅れをとらないか」と心配されることも多いでしょう。

この記事では、発達障害のお子様への学習支援において、特に「言葉の遅れ」と「手先の作業」に焦点を当て、エビデンスに基づいた具体的な対応法をお伝えします。

言葉の遅れへの対応

【視覚支援を積極的に活用する】

自閉スペクトラム症(ASD)や言語発達遅滞のあるお子様は、聴覚情報よりも視覚情報の方が理解しやすい傾向があります(※1)。

  • 絵カードやイラストを使って言葉の意味を伝える
  • スケジュール表を絵や写真で示す
  • 「次は〇〇するよ」と口頭で伝えるだけでなく、絵カードも見せる

視覚支援は、言葉の理解を助けるだけでなく、見通しを持つことで不安を軽減する効果もあります。

【スモールステップで言語指導を行う】

言葉の発達には段階があります。無理に複雑な言葉を教えようとせず、お子様の今のレベルに合わせたスモールステップでの指導が重要です(※2)。

例: ・「ママ」「パパ」など一語文から始める ・「ちょうだい」「いや」など要求や拒否を表す言葉を優先 ・「ママ、水」など二語文へ段階的に移行 ・徐々に「ママ、水ちょうだい」と三語文へ

焦らず、「今できること」を積み重ねていくことが大切です。

【コミュニケーション意欲を引き出す環境づくり】

言葉が出にくいお子様でも、「伝えたい」という気持ちは持っています。その意欲を引き出す環境が重要です。

  • お子様の興味のあるもの(好きなおもちゃ、食べ物など)を使う
  • 「伝えたら良いことがあった」という成功体験を積ませる
  • ジェスチャーや指さしも立派なコミュニケーションとして認める
  • 無理に話させようとせず、まずは「伝わった」ことを喜ぶ

アメリカ言語聴覚学会(ASHA)の研究によると、子どもの言語発達には「応答的な環境」が最も重要とされています(※3)。つまり、大人が子どもの発信に丁寧に応答することが、言葉の発達を促します。

手先の作業への対応

【微細運動スキルの発達段階を理解する】

手先の不器用さ(協調運動障害・DCD)は、発達障害のあるお子様に多く見られます(※4)。適切な支援のためには、まず微細運動スキルの発達段階を理解することが大切です。

【発達段階の例】 ・1〜2歳:つまむ、めくる、なぐり描き ・2〜3歳:丸を描く、粘土をこねる ・3〜4歳:はさみで紙を切る、ボタンをとめる ・4〜5歳:線に沿って切る、ひもを結ぶ ・5〜6歳:鉛筆で文字を書く、箸を使う

お子様が今どの段階にいるかを見極め、その段階に合った課題を提供することが成功への近道です。

【適切な道具選びと環境調整】

手先の不器用さには、「道具を変える」「環境を整える」ことで劇的に改善することがあります(※5)。

  • 鉛筆:太めの三角鉛筆や、持ち方サポートグリップを活用
  • はさみ:刃が短く、バネ付きの練習用はさみを選ぶ
  • 紙:滑りにくいマットの上で作業させる
  • 椅子と机:足が床につく高さに調整し、姿勢を安定させる

道具や環境を整えるだけで、「できない」が「できる」に変わることは少なくありません。

【段階的なアプローチで成功体験を積む】

いきなり難しい作業をさせるのではなく、簡単な課題から始めて成功体験を積むことが重要です。

例:はさみの練習 1. 一回切り(紙テープを一回チョキンと切る) 2. 直線切り(まっすぐな線に沿って切る) 3. 曲線切り(緩やかなカーブに沿って切る) 4. 複雑な形切り(円や星形など)

「できた!」という達成感が、次への意欲につながります。

【作業療法士(OT)の視点を取り入れる】

日本作業療法士協会の発達障害支援ガイドラインでは、微細運動スキルの向上には以下のアプローチが有効とされています(※6):

  • 感覚統合療法:触覚・固有感覚を刺激する遊びを通じて、手指の協調性を高める
  • 課題志向型アプローチ:実際の生活課題(着替え、食事など)を練習する
  • 環境調整:道具や作業環境を工夫して「できる」状態を作る

学習支援の基本姿勢

【「できないこと」ではなく「できること」に注目する】

お子様の「できないこと」ばかりに目が向くと、保護者様も疲れてしまいます。「できること」「得意なこと」を見つけ、そこを伸ばすことで、お子様の自己肯定感が育まれます。

【小さな成功を積み重ねる】

発達障害のあるお子様には、スモールステップで「できた!」を積み重ねることが何よりも大切です。一度に多くを求めず、今日できることを一つずつ増やしていく姿勢が重要です。

【専門家と連携する】

言語聴覚士(ST)、作業療法士(OT)、児童発達支援事業所など、専門家の力を借りることも大切です。保護者様一人で抱え込まず、チームでお子様を支える体制をつくりましょう。

おわりに

発達障害のお子様への学習支援は、一人ひとりの特性を理解し、その子に合ったアプローチを見つけることが何よりも大切です。

「言葉の遅れ」や「手先の不器用さ」は、適切な支援によって改善していくことが研究で示されています。焦らず、お子様のペースに合わせて、小さな「できた!」を一緒に喜んでいきましょう。

しょうとくクラブでは、お子様一人ひとりの発達段階に合わせた個別学習支援を提供しています。言語面でのサポート、手先の作業を含む微細運動スキルの向上にも力を入れています。

お子様の学習面で気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

【参考文献・エビデンス】 ※1 Quill, K. A. (1997). "Instructional considerations for young children with autism: The rationale for visually cued instruction." Journal of Autism and Developmental Disorders, 27(6), 697-714.

※2 Paul, R., & Norbury, C. F. (2012). "Language Disorders from Infancy Through Adolescence: Listening, Speaking, Reading, Writing, and Communicating." Elsevier Health Sciences.

※3 American Speech-Language-Hearing Association (ASHA). "Childhood Language Disorders" Clinical Guidelines.

※4 Lingam, R., et al. (2009). "Prevalence of developmental coordination disorder using the DSM-IV at 7 years of age: a UK population-based study." Pediatrics, 123(4), e693-e700.

※5 Case-Smith, J., & O'Brien, J. C. (2014). "Occupational Therapy for Children and Adolescents" (7th ed.). Mosby.

※6 日本作業療法士協会(2019)「発達障害領域における作業療法実践ガイドライン」

※7 文部科学省(2022)「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」